1. 如来・菩薩

如来・菩薩

ここでは、仏教の尊格のうち、如来・菩薩について、解説致します。

仏・如来・仏母・仏頂

釈迦如来(シャーキャ・ムニ)

実在の人物で、仏教の開祖に当たる方です。釈迦族の王子ゴータマ・シッダールタが悟りを得て釈迦如来になりました。初期の仏教ではお釈迦様の姿は描かれることなく、樹木や塔、法輪、足裏で表されていました。ですが、紀元1世紀からその姿が描かれるようになりました。
ガンダーラで作られた初期の釈迦像は、左右に梵天と帝釈天を従えた3尊形式で、梵天勧請と呼ばれる、梵天がお釈迦様に人々に教えを説くように進める場面を表しています。これは、やがて左右の尊格が弥勒菩薩と観音菩薩、あるいは文殊菩薩と普賢菩薩後に置き換えられるようになりました。ですが、インドで釈迦像として代表的なのは、両足を交差させて座り、大地に手を触れて悟りを得たことを表した成道時の姿です。他にも、童子形の誕生釈迦像や、苦行像、降魔像、仏滅時の涅槃像、瞑想をしている姿の定印釈迦像、説法釈迦像などで表されます。
禅宗の曹洞宗、臨済宗、黄檗宗のご本尊です。日蓮宗でもご本尊と考えることがあります。

薬師如来(バイシャジャグル)

東方浄瑠璃世界の教主で、名前の通り諸病、特に眼病を除き延命を願う如来です。左手に薬壺を持って描かれます。インドでは仏像の作例が見つかっていませんが、朝鮮や日本では人気のある如来です。

阿弥陀如来(アミターバ、アミターユス)

無量光如来(アミターバ)と無量寿如来(アミターユス)、という2つの仏が合わさって生まれた如来だと言われています。また、別に無量如来(アミタ)という仏がいたという説もあります。その名の通り、「無限の光を放ち、時間を越えた」という意味の如来です。「阿弥陀」は音訳した表現です。
阿弥陀如来は西方極楽浄土の教主で、この如来を念ずる人を極楽浄土に往生させてくれます。(日本では南無阿弥陀仏と唱えると悪人でも往生すると説きますが、インドの経典では阿弥陀仏の姿をイメージすると極悪人以外なら往生すると説きます。)また、延命や敬愛の如来とも考えられています。天台宗、浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗のご本尊です。時宗は「南無阿弥陀仏」という名号をご本尊とします。

阿弥陀如来

大乗仏教はイラン・ペルシャ系のサカ族、パルティア、クシャーナ朝、ササン朝などがインドを支配した時代に、イラン・ペルシャ文化の影響の強い西北インドや中央アジアで発展し、中央アジアを経由して伝わりましたので、大乗仏教はイラン・ペルシャの宗教の影響を大きく受けたと推測されます。無量寿如来・無量光如来も、イラン・ペルシャの主神である光の神のアフラマズダやミスラ、無限時間の神ズルワンと関係が深いと考えられています。

大日如来・毘盧遮那如来(ヴァイローチャナ、マハーヴァイローチャナ)

「毘盧遮那如来(盧舎那如来・ヴァイローチャナ)」は「光をあまねく照らす(遍照)」という意味の如来です。十方の諸仏を包括する『華厳経』や『梵網経』の主尊で、奈良の東大寺の大仏で有名です。『華厳経』ではお釈迦様が悟りを得られた後の仏としての本質の姿を「毘盧遮那如来」として捉えています。「毘盧遮那如来」を形を越えた法身、「盧舎那如来」を霊的な体、お釈迦様を肉体を持った姿として区別することもあります。

「ヴァイローチャナ」は密教では太陽との比喩から「大日如来」と訳されました。密教ではお釈迦様に代わって「大日如来」自身が説法をされます。また、「摩訶・大(マハー)」を頭につけて「大日如来・摩訶毘盧遮那如来(マハーヴァイローチャナ)」と呼び、宇宙の根源としての真理を表す如来としました。『金剛頂経』では、すべての如来の総体でもあるとして、「金剛界大日如来(ヴァジュラダートゥ・ヴァイローチャナ)」と呼びます。「大日如来」は日本密教(インドの中期密教)の中心となる如来で、真言宗のご本尊です。
密教の「大日如来」は長髪の髪を結い上げた、あるいは着飾った菩薩のような姿で表され、『大日経』では定印、『金剛頂経』では智拳印という印相を結んでいます。日本では法身の「大日如来」を描きますが、チベットでは「マハーヴァイローチャナ」は法身であって形を越えているので、姿を持って表されるのは「ヴァイローチャナ」だけです。

大日如来

前のページで少し紹介したように、インドで悪神とされている阿修羅(アスラ)の神々は、本来は天部(デーヴァ)の神々より高い位に当たるより根源的な光の神々でした。インドの神々には、阿修羅の王とされる「ヴィローチャナ」やその息子「バリ」がいます。「ヴァイローチャナ」はこれらの阿修羅の光の神をモデルにしていると考えられています。イランの主神は阿修羅に相当する神々ですので、阿弥陀如来や大日如来は、イランの光の神の影響で、阿修羅系の神々が仏教的に解釈されて復活した姿だと考えることができます。

五智如来・五仏

中期密教の『金剛頂教』は、すべての尊格やすべての存在を5つに分けて、その5つの根源を5人の如来であると考えました。こうして初めて密教の教義や曼荼羅が体系化されました。
中心に宇宙の根源である大日如来(ヴァイローチャナ)、東方には障害を打ち砕く阿しゅく如来(アクショーブヤ)、南方には富を司る宝生如来(ラトナサンバヴァ)、西方には阿弥陀如来、北方には願いをかなえる不空成就如来(アモーガシッディ)がいます。そして、それぞれの仏は5つの智慧、法界体性智(最高の智慧)、大円鏡智(鏡のように世界をそのまま見る智慧)、平等性智(すべて差別なく見る智慧)、妙観察智(人をよく観察する智慧)、成所作智(人を救う智慧)を表しています。
後期密教では、五仏は五蘊という認識作用と結び付けられるようになり、また、大日如来に代わって阿しゅく如来が中心の如来に昇格しました。その後、金剛さった(ヴァジュラサットヴァ)が加わって六仏としてまとめられるようになりました。

仏母

仏の悟りの根源である空の智慧などを尊格化したのが「仏母」達です。空の智慧が尊格化された般若仏母(仏母般若・プラジュニャーパーラミター)は、日本では般若菩薩を呼ばれることが多いですが、仏母と考えてよいでしょう。仏眼仏母(ローチャナー)は如来の眼力を現した尊格で、息災・延命・降伏の祈願がなされます。子宝祈願の准胝観音(チュンディー)、多羅菩薩(ターラー)、白衣観音(パーンダラー)などは日本ではたいてい菩薩と考えられていますが、仏母と考えられることがあります。「輪廻の海を渡るのを助ける女性」を意味する多羅は、日本ではほとんど知られていませんが、インド、チベット、ネパールでは重要な尊格で、中国では救度仏母と呼ばれます。

仏頂

仏の頭頂の盛り上がった部分を仏の智慧の象徴と考え、その陀羅尼を尊格にしたのが「仏頂」です。息災・敬愛などの祈願に使われる一字金輪仏頂の修法は、真言宗の最奥義です。一方、除災・招福の祈願に使われる熾盛光仏頂の修法は、天台密教の最奥義です。また、仏頂尊勝(ウシュニーシャヴィジャヤー)は女性の仏頂で、最強の陀羅尼を持っていると考えられ、蒙古襲来の時に蒙古降伏に使われました。

本初仏

後期の密教で、五仏よりもさらに根源的な仏として考え出されたのが「本初仏」です。チベットでは金剛さった(ヴァジュラサットヴァ)、法身普賢(ダルマカーヤ・サマンタバドラ)、持金剛(金剛執・ヴァジュラダラ)などが本初仏と考えられています。また、同時に「本初仏母」や、「本初守護尊」、「本初守護女性尊」とでも呼ぶべき存在も考えられました。金剛自在母、マハーシュリーヘールカ、忿怒自在母(クローデシュヴァリー)などがそれに当たります。

菩薩

観音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ、アヴァローキタスヴァラ)

聖観音菩薩

日本人にとても馴染みの深い菩薩である「観音菩薩」は、正式には「観自在菩薩」、あるいは「観世音菩薩」と漢訳されている菩薩です。「人々が救いを求めるのを聞くとすぐに救う、自在に真理を見通して救う」という意味の慈悲深い菩薩です。ペルシャ語からの類推で、「光輝く者」が本来の意味だったという説もあります。
「法華経」では現世の人々を救う姿が説かれ、浄土系経典では阿弥陀如来を補佐する菩薩として人々を浄土まで運ぶとされます。また、「華厳経」では、南方海上の補堕陀落山の浄土に住むと説かれています。
観音菩薩は、その名前からはシヴァ神と関係していて、一方、蓮華や水瓶を持つなどその姿からは、富・美・光の女神であるラクシュミーやシュリー、あるいはイランの河の女神アナーヒターと関係していると考えられています。観音菩薩は日本では女性的なイメージがありますが、インドでは王者的なイメージが強い菩薩でした。

観音菩薩は様々な姿をとって現れます。それらは多く手や顔を持つ密教的な姿をしていますが、これらを「変化観音」と呼びます。日本では「変化観音」は奈良仏教の時から祀られています。主な変化観音には、十一面観音・千手観音・如意輪観音・不空羂索観音・馬頭観音などがあります。これら変化観音に対して、普通の姿の観音を聖観音と呼びます。観音は「六観音」や「三十三観音」など、複数の観音を1組にまとめて祀られることもあります。
観音菩薩は浄土宗のお仏壇の脇仏として祀られます。

弥勒菩薩(マイトレーヤ)

弥勒菩薩

お釈迦様の次に如来の位につくと約束された菩薩で、「未来仏」、「当来仏」とも呼ばれ、如来として表されることもあります。弥勒菩薩には「上生信仰」と「下生信仰」があります。「上生信仰」では、弥勒菩薩は須弥山の上空にある兜卒天で神々や菩薩達に説法をしているとされ、弥勒菩薩の名前を唱えて念じると、死後、兜卒浄土に生まれ変われるとする信仰です。阿弥陀如来の浄土信仰と似ています。一方、「下生信仰」では、 56億7千万年後に弥勒菩薩が兜卒天から降りてきて如来となり、人々を救うとする信仰です。弥勒菩薩には少年神としての側面があります。日本では兜卒天で瞑想にふける姿を描いた半跏思惟の像が有名です。
弥勒菩薩にはユーラシア全体に広がる救世主神話と共通した側面があって、その元祖にあたるイランのミスラ神の仏教版であると考えられています。ミスラ神にも死後の天国の主宰神という性質と、未来の救世主という性質があります。

文殊菩薩(マンジュシュリー)

文殊師利菩薩は、智慧を象徴する菩薩です。智慧の象徴である剣や経典を持ち、獅子の背の上に乗っていることもあります。また、文殊菩薩にも勇敢な少年神としての側面があって、童子の姿でも表されます。
文殊菩薩は、その名前からはシュリー女神と関係が深く、一方、少年神としての姿からは、シヴァ神の子スタンダやクマーラと関係していると考えられています。 臨済宗のお仏壇に脇仏として祀られます。

普賢菩薩(サマンタバドラ)

仏の慈悲(菩提心)の象徴とされる菩薩です。文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍として表されるように、有名な菩薩で、『法華経』や『華厳経』でも重要な役割を果します。『華厳経』では限りない願いをかなえ、あらゆる場所に偏在する菩薩とされます。また、密教では特に重要な菩薩で、金剛さったと同体と考えられるようになり、「本初仏」とすら考えられるようになりました。白像の背に乗る姿で表されることが多く、息災や延命の祈願の対象とされます。臨済宗のお仏壇に脇仏として祀られます。

勢至菩薩(マハースターマプラープタ)

智慧の光で人々を救う菩薩です。観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍となり、阿弥陀三尊を形成します。また、力持ちで、月と関係が深いという側面もあります。家内安全や除福招福の祈願の対象とされます。浄土宗のお仏壇の脇仏として祀られます。

地蔵菩薩(クシティガルバ)

その名前から分かるように、大地を表す菩薩です。お釈迦様と弥勒如来の間の如来のいない世界を救う菩薩で、地獄に落ちた人をも救います。あの世とこの世の境に立って説法をするとされるので、よく、墓地の入口や、村の境界に祀られます。「身代わり地蔵」というように、人の苦しみを代わってくれる菩薩でもあります。また、子供の守り神でもあり、安産の祈願や水子の供養、また延命にも頼りにされます。インドでは着飾った菩薩の姿で表されましたが、中国で僧の姿になりました。

虚空蔵菩薩(アーカーシャガルバ)

虚空とは地・水・風・火に次ぐ第5の要素としての空間のことで、この菩薩はさまたげのない空間に満ちる広大な智慧を表します。日本では古来から山岳系の仏教(自然智宗)で重視され、空海も修した「求聞持聡明法」の本尊です。
また、芸能や手工業などの非農耕の民から信仰されました。芸能や技術の智慧、記憶力などを司る菩薩です。

金剛さった(ヴァジュラサットヴァ)

金剛(ヴァジュラ)は本来は雷神であるインドラの武器である稲妻のことであり、密教の法具にもなっている金剛杵のことです。また、同時にダイアモンドでもあります。それが、煩悩を破壊する堅固な仏の智慧の象徴となりました。
金剛さったは、金剛杵を尊格化した存在で、堅固な菩提心(慈悲と悟りを求める心)の象徴です。しかし、金剛杵と共に金剛鈴を持ち、智慧と慈悲の統一を象徴しています。金剛サッタは、密教で菩薩の代表とされる普賢菩薩と、金剛手(ヴァジュラパーニ)とを合わせて生まれた尊格です。金剛手や金剛サッタはお釈迦様や大日如来から密教の教えを最初に受けた存在です。金剛さったは日本(中期密教)では菩薩ですが、後期密教では「本初仏」にまで昇格しました。

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