仏画とは

仏画とは
仏画は主に、寺院の壁や掛け軸などに仏様のお姿を描いたものが多いのですが、仏教を題材に描いたものも含まれます。また、絵画だけでなく、版画も仏画とされています。ちなみに、仏様のお姿を彫刻で表現したものが仏像です。
仏画にはさまざまな種類があります。例えば、礼拝などに用いられる独尊で描かれた仏様をはじめ、菩薩様の尊像画、浄土図などが一般的です。
仏画は寺院などに納められるものであるため、それを描く仏画師には日本の伝統絵画に関する卓越した技能が要求されます。
仏画師になるためには、現役の仏画師に弟子入りする必要があります。長い修行の末、独立しはじめて自らの工房を持つことが許されます。
仕事の依頼は、主に全国の寺院などから来る案件が多いようです。最近は、カルチャーセンターなどで仏画教室を開催することもあり、仏画に興味を持たれた方に対して、描き方を教えているところもあります。
仏画の概要
仏教絵画
また、仏像で表現することが難しい仏教の深い教えを、多くの人に詳しく説明するためにも用いられたということです。
寺院の掛け軸や壁画、紙や絹、板などに描いた絵画や版画なども含まれます。
仏教美術の中での仏画の位置づけ
仏教美術の中には、仏像、寺院建築と並び、仏画が含まれます。当初、口頭で伝えていた仏教ですが、教義内容の説明が難しい部分もあったため、それを補完する形で仏像や仏画が作られるようになりました。
それにより、仏教美術の発展につながっていきました。
仏画が見られる・描かれる場所
また、仏画師の工房やアトリエなどでも、展示していることもあります。最近では、仏画教室の生徒の作品展などでも、見ることもできます。
本来の仏画は、寺院や仏画師の工房で描かれることが一般的でした。しかし現在では、趣味として仏画を描かれる方も多いため、一概に描かれる場所を特定することはできません。
時代別に見た、有名な仏画作品
奈良時代の仏画
奈良時代で有名な仏画は、薬師寺所蔵の「吉祥天像」とボストン美術館所蔵の「釈迦霊鷲山(りょうじゅせん)説法図」などが挙げられます。
平安時代の仏画
平安時代で有名な仏画は、京都国立博物館所蔵の「普賢菩薩(ふげんぼさつ)像」「釈迦金棺出現図」、竜光院所蔵の「伝船中湧現観音像(せんちゅうゆうげんかんのん ぞう)」、金剛峯寺所蔵の「善女龍王(ぜんにょりゅうおう)像」「仏涅槃(ねはん)図」、曼殊院所蔵の「不動明王像」、薬師寺所蔵の「慈恩大師(じおんだいし)像」、教王護国寺所蔵の「両界曼荼羅図」などがあります。
鎌倉時代の仏画
鎌倉時代で有名な仏画は、醍醐寺所蔵の「閻魔天像」「文殊渡海図」、禅林寺所蔵の「山越阿弥陀図(やまごしあみだず)」、知恩院所蔵の「阿弥陀二十五菩薩来迎図」、本願寺所蔵の「親鸞聖人像」、東京国立博物館所蔵の「地獄草紙」、京都国立博物館所蔵の「餓鬼草紙」、大英博物館所蔵の「地蔵菩薩像」、ギメ美術館所蔵の普賢十羅刹女(じゅうらせつにょ)図、シカゴ美術館所蔵の「阿弥陀三尊来迎図」などがあります。
室町時代の仏画
最後に、室町時代で有名な仏画として、リートパーク美術館所蔵の「不動明王二童子像」、ケルン市東洋美術館所蔵の「仏涅槃図」が挙げられます。
仏画の歴史
仏画の起源
日本の仏画のはじまり
日本では木造建築が主流だったため、仏画は法隆寺などにある土壁の壁画以外、ほとんどが天井や柱、板壁、扉に描かれた板絵でした。一般に広く普及したものでは、礼拝用の掛幅画や巻子本 (かんすぼん)などがあったようです。
時代ごとに見られる特徴
平安時代の仏画の特徴
平安時代の後期には末法思想が流行したため、浄土真宗のもとで「来迎図」と呼ばれるものも描かれるようになりました。来迎図とは、人々が亡くなった後、阿弥陀如来が迎えにくるという浄土信仰の教えを絵画で表現したものです。
鎌倉時代の仏画の特徴
この頃、「似せ絵(にせえ)」と呼ばれる肖像画が生み出され、仏画の中でも開祖などが描かれるようになったそうです。
それまでは仏教の教えなどを表現した作品が多かったのに対し、鎌倉時代には現実を追求しました。現実をありのままの姿が描かれるようになったことが特徴です。
室町時代~現在の仏画の特徴
江戸時代には、狩野派などの絵師が登場したことにより、襖や壁、障子に描かれる仏画も発展したそうです。 しかし、以前の時代と比較して大きな特徴の変化などは見られず、そのまま現在の仏画に至っています。
仏画の役割・目的
崇拝・礼拝の対象
先ほども少し触れましたが、仏像だけで伝えきれない複雑で詳細な教義内容を、民衆に咀嚼して伝えるための役割も担っていました。
絵解きなど
例えば、平安時代には、法隆寺や四天王寺において「聖徳太子絵伝」の絵解きが行われたと伝えられています。その後、絵解きを職業にする人も現れはじめ、日本中に浸透していきました。
仏間用の掛け軸(仏画)の選び方
天台宗
「阿弥陀如来」や「釈迦如来」を本尊に祀る場合は、向かって右側に「天台大師」、左に「伝教大師」を配置するのが一般的です。
浄土宗
また、向かって右側に「観音菩薩」、向かって左側に「勢至菩薩」を祀るという場合もあります。
浄土真宗本願寺派
また、脇侍は、向かって右に「親鸞聖人」、向かって左に「蓮如聖人」を配置します。
真宗大谷派
脇侍には向かって右に「十字名号(帰命盡十方無碍光如来)」を、向かって左に「九字名号(南無不可思議光如来)」を配置します。
曹洞宗
ですので、寺院などに確認して、適切なものを選ぶ必要があります。
一般家庭の仏壇では、「一仏両祖の三尊仏」と呼ばれる祀り方で飾ります。中央に「釈迦牟尼仏」を配置し、向かって右に「承陽大師」、向かって左に「常済大師」の掛け軸を祀ることが多いです。
仏画に描かれるテーマのジャンル
崇拝、礼拝の対象
曼荼羅
変相図
浄土図
六道輪廻思想画
6つの世界とは、「天道界」「修羅道界」「人間道界」「餓鬼道界」「畜生道界」「地獄道界」で、六道輪廻思想画では、前世や過去の行為が原因で、現在の結果がもたらされるという因果応報の世界が描かれました。
垂迹(すいじゃく)画
まとめ
また、仏教と深いつながりのある仏画は、我々日本人にとって関わりの深いものだと思います。
これを機会に仏画を描いてみようと思われる方もいるかもしれません。最近は、全国で仏画を教えてくれる教室などもありますので、足を運んでみてはいかがでしょうか。

