1. 明王・天部・仏弟子

明王・天部・仏弟子

ここでは、仏教の尊格のうち、明王・天部・仏弟子について、解説致します。

明王・明妃・守護尊

不動明王(アチャラ)

不動明王

「動かない守護者」という意味の不動明王は、日本においては明王の代表的存在です。ただ、インドでも中国でも像の作例は少ないようです。その名前からすると、シヴァ神と関係が深いようです。日本では大日如来の使者的性質を持っていて、童子の姿で表され、左目を細め、右目は見開いて天地をにらみ、左右の牙で上下の唇を噛む表情が一般的です。また、2人の童子を伴って描かれることが多くなりました。一切の煩悩を滅してくれる存在です。真言宗のお仏壇の脇仏として祀られます。また、修験道のご本尊でもあります。

降三世明王(トライローキャヴィジャヤ)

「3つの世界を降伏する者」という名前を持つ明王です。多くの顔や手を持つ姿で描かれることもあり、シヴァ神とその妃を踏みつけています。金剛さったの化身と考えられています。

大威徳明王(ヤマーンタカ)

「閻魔大王を倒す者」という名前を持つ明王で、ヒンドゥー教の冥界神ヤマを降伏する役割を持っています。水牛の背に乗っている姿で描かれます。阿弥陀如来や文殊菩薩の化身とも考えられ、戦勝祈願の対象でした。

軍荼利明王(クンダリー)

「甘露を入れる壺」、「ドクロを巻く者」という名前を持つ明王です。宝生如来の化身と考えられています。本来はガネーシャ(聖天)を降伏するという性質のあった明王です。装身具に蛇を用いることもあって、ヨガで操作する気のエネルギー、クンダリーニ(女神のシャクティ)との関係も推測されます。

愛染明王(ラーガラージャ)

愛欲を象徴する明王です。そのため、和合や敬愛の祈願の対象とされます。6本ある腕のうち1本は持物がないため、ここの祈願する内容を象徴する物を持たせて修することがあります。

馬頭観音(馬頭明王・ハヤグリーヴァ)

ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の化身の一つです。日本では「観音菩薩」と考えられることが多いのですが、インドの仏教では本来は観音菩薩の従者で、怒りを現した姿の明王です。人身馬頭の姿をしていて、日本では馬を守る仏と考えられ、路傍の石仏として祀られました。

孔雀明王(マハーマユーリー)

本来は女性であるため、明妃と呼ぶべき尊格です。そのためか、例外的に融和な菩薩の姿で描かれます。毒蛇を退治し、雨を呼ぶとされた孔雀を尊格化した明妃です。ですから、息災と祈雨の本尊とされます。菩薩や仏母と呼ばれることもあります。

守護尊

後期密教の経典にはそれぞれ主尊がいます。これらは「明王」が発展した尊格で、チベットでは「守護尊」と呼ばれ、重視されました。これらの多くは、怒りを表した表情で、多くの顔や腕を持ち、女性尊と交わった姿で表されます。『カーラチャクラタントラ』の時輪金剛(カーラチャクラ)、『秘密集会タントラ』の阿しゅく金剛(グヒヤサマージャ)、『ヘーヴァジュラタントラ』の呼金剛(ヘーヴァジュラ)、などです。金剛亥母(ヴァジュラヴァーラーヒ)のような女性の重要な守護尊もいます。
「守護尊」には2つの系列の尊格があります。一つは、大威徳明王から発展したヤマーンタカ系、もう一つは降三世明王から発展したヘールカ系です。ヘールカはもともとはガネーシャに関係していますが、ヒンドゥー教の女神達やシヴァ神の暗黒の側面を降伏する役割の守護尊です。時輪金剛はこの2つの系列を合わせた尊格で、イランの無限時間の神ズルワンと関係していますが、イスラム教の神を降伏する役割の守護尊と言われています。

天部・護法神

梵天(ブララフマー)

バラモン・ヒンドゥー教の宇宙の創造神です。仏教では、お釈迦様が出家することを助けると共に、悟りを得られた後、人々に説法することを勧めるなど、お釈迦様と関係の深い、天部を代表する神です。

帝釈天(インドラ)

バラモン教の主神に当たる嵐の神です。ブラフマーがバラモン階級の代表的な神であるの対して、インドラは王族・戦士階級を代表する神です。雷である金剛杵を武器に悪龍と戦い、雨によって豊穣をもたらします。仏教では梵天と共にお釈迦様を守護する神です。須弥山の頂上にある宮殿に住んでいます。戦勝や除災・招福の祈願をする尊格で、日蓮宗で重要視されます。

毘沙門天(多聞天・ヴァイシュラヴァナ)

毘沙門天

インドではもともとは「クベーラ」と呼ばれる神でした。本来は悪鬼の長でしたが、ヒンドゥー教では財宝・福徳の神に変化しました。本来、豊穣の神はその下に暗黒の側面を合わせ持っています。クラーベは財宝神の特徴として、大きなお腹をして、袋を持った姿をしています。この神が仏教の護法神「毘沙門天(ヴァイシュラヴァナ)」となり、中央アジアに伝わった時に勇ましい神に変化しました。日本でも当初は戦勝の神として信仰されましたが、不思議なことに、やがて七福神に入るような福徳の神に戻りました。

四天王

帝釈天のもと、四方を守護する持国天(ドゥリタラーシュトラ)、増長天(ヴィルーダカ)、広目天(ヴィルーパークシャ)、毘沙門天の四人の護法神です。インドでは柔和な姿をしていましたが、中央アジアから中国に伝わった頃には、甲冑をつけた武人の姿に変りました。息災のご利益があります。

十二天

八つの方角と天地、日月のインドの神を集めた12の護法神です。帝釈天、火天(アグニ)、閻魔天(ヤマ)、羅刹天(ラクシャサ)、水天(ヴァルナ)、風天(ヴァーユ)、毘沙門天、伊舎那天(イーシャーナ)、梵天、地天(プリティヴィー)、日天(スーリヤ)、月天(チャンドラ)の12神です。お寺を聖なる空間として保つ役割を果します。

執金剛(持金剛・仁王・金剛力士・ヴァジュラダラ)

「金剛杵を持つ者」という意味の尊格達です。バラモン教のインドラ(帝釈天)をモデルにしていて、シヴァ神やヘラクレスの影響も受けています。仏教では本来は夜叉と考えられ、単にお釈迦様を守る警護役でした。日本では門の両脇などで寺を守る一対の仁王・金剛力士として親しまれています。金剛手(ヴァジュラパーニ)や金剛さったも執金剛の一族と考えられています。密教時代になって、秘密の教えを最初に授けられた存在と考えられるようになり、どんどん昇格して、最後には「本初仏」にまで上り詰めます。昇格した執金剛は、金剛さったと同じく、金剛杵と金剛鈴を持ち、智慧と慈悲の統一を象徴しています。

聖天(歓喜天・ガネーシャ、ガナパティ)

ヒンドゥー教のシヴァ神の息子で象の姿をした神です。本来は原住民の障碍を起こす神でしたが、障碍を取り除く神、財宝神、学問の神に変化しました。商売繁盛や愛欲の神としても知られています。クベーラと同じく豊穣と暗黒の両面を持っていて、大きなお腹をしていて、ネズミを従えています。日本でも、夫婦和合やどんな願いでもかなえてくれる神とされました。好物とされる大根が捧げられます。後醍醐天皇が倒幕のために修したと言われています。

大黒天(マハーカーラ)

マハーカーラはその名の通り、「大いなる暗黒(時)」という意味で、シヴァ神の暗黒の側面を指す恐ろしい神でした。仏教では怒りを現す明王的な護法神となって、シヴァ神の息子の象神ガネーシャを降伏しました。日本にも摩訶迦羅という名で伝わましたが、一部の密教僧達の間でしか知られませんでした。
先にも書いたように、暗黒と豊穣は一体なので、マハーカーラはシヴァ神の豊穣の側面を、財宝神クベーラから取り込みました。こうして、お腹が膨らんだ大きな袋を持つ財宝の神に変化しました。日本にも財宝神に変化したマハーカーラは伝わって、布袋様や大国主と結びつきながら、大黒天として親しまれるようになり、七福神にも入りました。また、日蓮宗のお仏壇に脇仏として祀られます。大黒天、毘沙門天、聖天はいずれも暗黒と豊穣を合わせ持つ神なのです。

十二神将

薬師如来に従う当たる12人の夜叉の守護神です。通常、甲冑をつけた勇ましい姿で表されます。宮毘羅(くびら)、伐折羅(ばさら)、因達羅(いんだら)など、「羅」で終わる名前の神々で構成されています。宮毘羅は本来は財宝神のクベーラですが、毘沙門天と同様に、中央アジアで勇ましい姿に変ったのでしょう。

吉祥天(ラクシュミー、シュリー)

吉祥天

インドのラクシュミー女神はヴィシュヌ神の妃である富と美の女神です。姉妹のシュリー女神も似た性質の女神で、二人は一体と考えられました。この二人が仏教に取り込まれて吉祥天となりました。ラクシュミーは蓮の花の上で蓮の花を持ったを姿で描かれます。観音菩薩や文殊菩薩のモデルと言われています。仏教では毘沙門天の妃とされていて、日本では神道の女神や天女と習合しました。

弁才天(弁財天・サラスヴァティー)

ヒンドゥー教の河の女神で音楽や学問の女神でもあり、ブララフマー神の妃とされます。インドでは孔雀を従えてヴィーナという楽器を弾いていますが、日本では琵琶を弾く姿で表されます。また、河や水の神と習合しましたが、財宝神としての性質が付け加わって、「弁才天」から「弁財天」になって七福神にも入っています。

荼吉尼天(ダーキニー)

本来、インドではダーキニーはシヴァ神の暗黒の妃カーリー女神の従者で、人の肉を食べ裸で空を飛ぶ魔女的存在でした。仏教では大日如来によって改心したとされ、大黒天の従者ともされました。後期密教では、ヒンドゥー教のシャクティーや母天(マートリカー)に対応する存在として、気のエネルギーや霊的な智慧と考えられるようになり、仏母的な存在にまで昇格しました。中国では「空行母」と訳されます。
日本では稲荷・狐信仰や、修験者の天狗信仰と結びついて広がりました。また中世には、天照大神の化身と考えられて、天皇の即位灌頂の主尊にまでなりました。本来は鬼女の姿で現れましたが、狐に乗って如意宝珠を持つ天女の姿で描かれるようになりました。
日本仏教の中で暗黒の側面を持つ女神が、荼吉尼天と鬼子母神です。

摩利支天(マーリーチー)

陽炎を神格化した女神で、バラモン教の太陽神スーリヤと関係した女神だと推測されています。日本では戦勝祈願の神として知られています。

鬼子母神(訶梨帝母・ハーリーティー)

インドでは夫のパーンチカと共に信仰された夫婦神で、本来は障碍神でしたが、豊穣神となりました。やはり暗黒と豊穣は一体です。仏教では、鬼子母神はもとは幼児を喰う鬼女でしたが、仏が彼女の子供を隠して子を失う親の悲しみを悟らせたため改心したとされます。日本では聖母子信仰と結びつきました。安産、多産、子供の守護などのご利益のある女神です。日蓮宗では『法華経』の守護神、現世利益の女神として信仰され、お仏壇に脇仏として祀られています。夜叉の姿で描かれることも、天女の姿で描かれることもあり、子供をつれています。

妙見菩薩(北辰菩薩・尊星王)

北極星を神格化した神で、インドにはなく、中国で道教の神を仏教が取り入れたものです。天台宗では吉祥天と同体と考えられています。延命や息災、眼病の祈願の対象とされます。

明王・明妃・守護尊

十弟子

お釈迦様の伝記登場する重要な10人の弟子をまとめて10弟子と呼びます。お釈迦様に従がう高弟として、10人まとめて像が造られます。「智慧第一」と言われた舎利弗(シャーリプトラ)、超能力を持ち、舎利弗と共に二大弟子と呼ばれる目連(マウドガリヤーヤナ)、仏滅後の教団運営を手がけて実質的な後継者となった大迦葉(マハーマーシャパ)、第一回の仏典結集でお釈迦様の教えのまとめ役をした阿難(アーナンダ)などがいます。

十六羅漢

仏滅後に、法に従って修行をする16人の羅漢が、中国でまとめられ、信仰されました。日本にも伝わって、法華経信仰や禅宗と関係して信仰されてきました。画として描かれることが多いようです。

五百羅漢

羅漢の位に達した500人の羅漢のことで、やはり中国で信仰され、像が造られました。インドの経典類には、お釈迦様に500人の僧が付き添ったとか、500人の羅漢に説法したと伝えられています。

菩提達磨

達磨大師

達磨大師は中国の禅宗の伝説的な開祖です。インド人と言われていますが、実在の人物であるかどうかは説が分かれています。「ダルマさん」として、外国の僧としては例外的に日本の一般庶民にも親しまれています。9年間壁に向かって坐禅をしたと伝えられ、「以心伝心」や「七転び八起き」などの言葉が彼と結び付けられています。臨済宗、場合によっては曹洞宗でもお仏壇の脇仏として祀られます。

日本の祖師達

日本の各宗派の祖師達は、各宗派でお祀りされています。各宗派でお仏壇にお祀りする祖師に関しては、「各宗派のお仏壇の飾りかた」をご参照ください。
宗派を超えて、日本の一般庶民に親しまれてきた代表的な聖者には、弘法大師、聖徳太子、役行者がいます。
弘法大師空海は日本真言宗の始祖ですが、全国を遍歴したという伝説が生まれ、水に関する秘蹟が多く語られています。また、弘法大師は弥勒信仰を持っていて、兜率天上に往生して弥勒下生を待つと遺言しました。ですが、その後、弘法大師は高野山で生身のまま入定して弥勒の下生を待っているとか、弘法大師自身が弥勒であると考えられるようになりました。
聖徳太子は日本仏教の祖と考えられることがあります。太子は観音菩薩の生まれ変わりとされ、「救世菩薩」と呼ばれます。聖徳太子にも弥勒信仰があって、太子信仰には少年姿の弥勒信仰や、聖母子信仰が結びつき、太子には少年神という側面が生まれました。また、特に職人達に信仰され、職能神という性格も生まれました。

修験道の開祖とされる役行者(役小角)は、孔雀明王法を修して、鬼や葛城山の神を使役し、空を飛んだとされています。実際の役行者は、道教系の神仙術色の濃い山岳信仰の修行者だったと思われますが、後世に仏教徒として伝説化されました。役行者の像は山岳信仰がある各地に祀られていて、2匹の鬼を従えていることもあります。また、役行者は人々を救うために神の顕現を祈ると、最後に「蔵王権現」が現れたとされています。この神は仏典には説かれていない神で、明王の姿をしていて各地に祀られています。魔障除去などのご利益があるとされます。

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